AIと毎晩21時に開く書房をつくっている|YouTube BGMチャンネル「雨音書房」の裏側
正直に言います。
私が運営しているYouTubeチャンネルの登録者は、まだ39人です(2026年8月末時点)。
チャンネル名は「雨音書房」。雨の音が似合う静かな部屋で、本を読むための1時間BGMを流す、歌なしの音楽チャンネルです。
登録者39人。収益はゼロ。数字だけ見れば、何者でもありません。
それでもこのチャンネル、毎晩21時に新しい動画が公開されています。
作曲も、画像も、動画編集も、投稿予約も、ほとんどAIがやっています。でも「AIに丸投げして全自動」ではないんです。
今日は、AIを「制作チーム」にして小さな創作を続ける話を書きます。
毎晩21時に、書房を開けている
雨音書房の概要欄には、こう書いてあります。
毎晩21時、雨音書房は静かに扉を開きます。
新しい物語に出会うもよし、 お気に入りの一冊を、もう一度ゆっくり読み返すもよし。
私の中では、YouTubeに動画を投稿しているというより、毎晩21時に小さな書房を開店している感覚です。
今夜は雨のプラハ、時計師の書斎。昨日は雨のソウル、韓屋の書斎。その前は夜明け前のイスタンブール、古地図の部屋。
雨と、本と、灯り。場所だけが毎晩変わる。
イメージはこんなお店です。毎晩21時、雨の中にひっそり灯りがつきます
この「お店」を一人で毎晩開けるのは、普通なら無理です。作曲して、ジャケットを描いて、1時間の動画にして、タイトルと説明文を書いて、投稿予約する。1本作るだけで週末が消えます。
そこでAIの出番なんですが、最初に大事な話をさせてください。
AIに「丸投げ」したら、たぶん失敗していた
「AIで曲を作ってYouTubeに上げてます」と言うと、ボタンひとつの全自動を想像されがちです。
実際は違います。
私がやっているのは、AIに役割を分けて渡すことでした。イメージとしては、こんな制作チームです。
| 担当 | 役割 |
|---|---|
| 統括 | 制作方針の整理と、各担当の成果の統合 |
| 分析 | チャンネルの数字とトレンドを見る |
| 作曲 | 音楽生成AIへの指示書づくりと音のチェック |
| 画像 | 背景とサムネイルの構図・配色 |
| 投稿 | タイトル・説明文・公開予約の設定 |
| 改善 | 公開後のクリック率・視聴時間の振り返り |
| 検品 | ファイル形式・文字崩れ・設定漏れの最終確認 |
もちろん7人のスタッフが実在するわけではありません。AIの中に「視点」を分けて作った、思考の枠組みです。
でも、これをやるかやらないかで結果が全然違いました。
「いい感じの曲を作って動画にして」だと、ぼんやりした平均点が返ってくる。例えば、「作曲担当として、テンポ58、ピアノ中心、盛り上がりなし、3〜4分で静かに終わる曲の指示書を書いて」だと、書房に置ける音が返ってくる。
判断を持たずに「いい感じに作って」と頼むだけなら、それはただAIが作っただけのものです。うちの場合、どんな音なら書房に置けるかを決めるのは私で、手を動かすのはAI。この分担のおかげで、短い時間の作業でも毎晩続けられる仕組みになっています。
1本の動画ができるまで
流れはだいたいこうです。
- チャンネルの数字を見る(どの「場所」の動画が伸びたか)
- 次の舞台を決める(例:雨の深夜、プラハの時計師の書斎)
- AIが作曲サービス用の細かい指示書を作る
- 曲を複数生成して、良いものだけ選ぶ
- 音量をそろえて、約1時間のBGMに編集する
- 舞台に合わせた背景画像とサムネイルを作る
- 英語と日本語のタイトル・説明文を作る
- YouTubeの管理画面で予約投稿まで設定する
- 公開後の数字を、次の作品に返す
ポイントは、1本ずつバラバラに作るのではなく、「作る→出す→測る→少し変える」を毎晩回していることです。
たとえば最近の「少し変える」は、こんな実験でした。
視聴者は3分半で「繰り返し」に気づく(かもしれない)
以前の動画は、約1分46秒の曲を2曲、交互に17回つないで1時間にしていました。
すると、開始から3分半ほどで最初の曲が戻ってきます。
うちの動画の平均視聴時間は、だいたい4分40秒〜7分31秒。
……繰り返しに気づかれて、飽きられているのでは?
正直、証拠はありません。ただの仮説です。でも検証する価値はある。
そこで新しい動画は元の曲を4曲に増やしました。同じ曲が戻ってくるのが約10分後になります。これで視聴時間が変わるかどうか、今まさに数字を待っているところです。
「4曲にしたら伸びました!」と書きたいところですが、まだ分かりません。この方向性が合っているのか、間違っているのかも、私にはまだ分かりません。
それでも、分からないことを分からないまま実験して、ありのままを書いておく。それができるのが、毎晩お店を開けている強みだと思っています。
AIにできなかったのは、たった一言だった
一番書きたかった話がこれです。
ある日、AIが作ったサムネイル用の画像を見ました。雨の窓辺で本を読む女性。構図も光もきれいで、技術的には何の問題もない。
でも、何かが引っかかる。
「……ちょっと女性が、たくましくないですか?」
肩幅が、ほんの少しだけしっかりしすぎていたんです。静かな書房の空気には、少しだけ合わない。
この一言のあと、AIへの指示は変わりました。自然な肩幅、上品な横顔、人物を大きくしすぎない、主役はあくまで本と窓と灯り。以後の作品の人物は、ちゃんと書房の住人になりました。
AIの成果物って、9割は本当にすごいんです。でも残り1割の「ほぼ良いけど、何か違う」は、人間が言葉にしないと直らない。
私の仕事は作業ではなく、この違和感を言葉にすることなんだと思った瞬間でした。
サムネイルもそうですし、曲もそうです。「ほぼ良いけど、何か違う」は、AIには分かりません。
自分がどういうチャンネルにしたいのか。お手本にしているチャンネルは、どんな風に作っているのか。それを見極めて、進む方向を決める。ここだけは、AIではなく自分の仕事です。
公開ボタンの直前だけ、人間に戻ってくる
もう一つ、決めていることがあります。
AIは曲を作り、動画を編集し、YouTubeの管理画面で著作権チェックの結果まで確認します。基本、賢いので全部やってくれます。
それでも、公開予約の最終ボタンの直前だけは、必ず私に確認が来るようにしています。
「この動画を、8月19日21時に公開予約します。よろしいですか」
ここで私が「OK」を出して、初めて予約されます。
世に出す最後のボタンだけは、人間が責任を持って押す。そう決めています。
なんといっても、このチャンネルの舵取りをしている店主は、他ならぬ私ですから。
数字は小さい。でも「続く仕組み」が残った
現実の数字も書いておきます。
- 登録者:39人(数字はいずれも2026年8月末時点)
- 直近28日の視聴回数:753回
- 収益:0円
小さいです。笑っちゃうくらい小さい。
でも、このチャンネルには「毎晩21時に必ず開店する」という仕組みがあって、それはもう3ヶ月近く続いています。私一人の根性ではなく、仕組みが続けてくれている。
仕事をして、育児をして、家事をして。時間なんて、いくらあっても足りません。そんな自分でも続けられる環境を、先に作ってしまう。それが一番大事だと思っています。
以前、LINEに話しかけるだけでXに投稿できるツールを作った話を書きました。あのときも今回も、結論は同じところに着きます。
AIと組んで一番変わるのは、作業時間ではなく、「続けられるかどうか」なんです。
まとめ
- AIには丸投げせず、役割を分けた「制作チーム」として渡す
- 作る→出す→測る→少し変える、を毎晩回す
- 数字の仮説(2曲の繰り返し問題)は、断定せず実験する
- 「ちょっとたくましくないですか?」みたいな違和感の言語化は、人間の仕事
- 公開の最終ボタンだけは、人間が押す
AIとの協働って、「作業が消えて楽になる」というより、「一人では続かなかった小さな創作が、続けられるようになる」ことでした。
雨音書房は今夜も21時に開きます。雨の日に、読みかけの本のページを進めたくなるBGMを流す小さな書房です。そっと覗いてみてください🌱